あなたのミサンドリーはどこから?
3月8日は「国際女性デー」!ホルガ村カエル通信では3月いっぱいはそれにちなんでミサンドリー特集をお届けしています。定期配信のフェミニズム周辺話だけでなく、不定期配信レターも再録シリーズも全部ミサンドリー関連です🔥
女性差別に怒るのは女性の役目?
私は配偶者のいるミサンドリストである。「自分は結婚しておいてミサンドリストを名乗るのか」「ミサンドリストのくせに結婚しているのか」と、不評を買いやすい立場である。というか、一貫してないように見えやすいと思う。他人が私のことをどう思うのか、ということは私にはコントロールのできないことなので、それは仕方がないことと思うけれど、私と夫(以下D氏)の関係を憶測で適当に書き散らされるのは迷惑だ。
D氏もツイッターをやっていて共通のフォロワーさん、フォロイーさんもいるし、フォロー関係になくても私たちが夫婦であることを知っているひとは少なくないのだが、過去に、D氏のことを私がコントロールしているかのように書かれたこと、D氏が私に同情するあまりフェミニズムに傾倒しているかのような書き方をされたことなどがある。まぁ、だいたいは私が強くてD氏がそれに追従しているかのような内容である点は共通していた。ちなみに全部、いわゆるリベラルサイドからのレッテル貼りだ。
女性差別に怒るのは女性、男が女性差別に言及するのはモテたいから、男が女性差別に怒るのは恋人(女)の影響…みたいなステレオタイプは根強いんだな、と思う。そういう「強い理由」がなければ、男性がそこまで女性差別解消に関心を持って発信をするはずがないと思ってしまうわけだから。もちろん意図的に私やD氏を馬鹿にしてやりたいという悪意を持ったものもあっただろうが、その発言で自分の中のジェンダーバイアスが露呈することを厭わなかったのか?というのは不思議である。
最初に結論から言うと、私のミサンドリーはD氏のミサンドリーに触発された部分がかなりある。というのも、私は昔から男性を怖がらせてしまう何かがあるらしく、たぶん、他の女性と比べると、男から嫌な目に遭わされた経験が少なかったということに加え、自分自身が男性たちのホモソ的サブカルノリに混ざることで「私は普通の女の子じゃないから」という形で自分を誤魔化すタイプのミソジニーに染まっていた期間があるため、男性に対してそこまで嫌悪を持つに至ってなかったのだ。D氏は男性であるがゆえに、男性が男性相手のときに油断して口にする女性差別発言を耳にする機会も私よりも多かったために、私などよりも「男はクソ」と認識していたこと、もともとの行動原理が「社会正義」なのも大きいだろう。また、最近も「自分の知らないことは専門家の話を聞くようにするじゃん?女性については女性が一番詳しいのだから、男は女性の言うことを黙って聞くべきなのに、なんで自分たちの方が女性について知ってるみたいな勘違いしてんだろうか?」と言っていた。
フェミニズムについても、私が部分的にリベフェミ的なところを持っていたのに対し、D氏は一貫してラディフェミだった。まだ結婚して間もない頃に、性産業についての話で私がぬるい認識だったために喧嘩になったことがあるくらいだ。その後、AVの中身に性暴力描写が多いことや強要問題などについて知り、2015年末には「おっぱい募金(※注)」を巡る議論を経て、セックスフォビアだとリベフェミ推しの男どもからレッテルを貼られるまでになった。他にも風俗嬢アカウントのクソ客についての呟きや「ネタ無罪」だと思ってレイプや痴漢を冗談にする男性の多さを知っていけばいくほど、男性不信は深まった。
※注 AIDS予防啓発のチャリティーイベントで1000円以上募金すると現役AV女優のおっぱいが触れるというのが毎年恒例だったらしいのだが、2015年にイベントの主催が変わったことでツイッターにプロモーションが流れて問題になった。女性の身体を景品扱いするおっぱい募金の中止を求める署名運動もあり、最初はリベラル男性の多くが賛同したものの、「ワーカーの主体性を無視する差別だ」「性嫌悪だ」と運動内で発言力のある男性が言い出したことで、男性たちは「思慮が足りなかった」と一気に反省モードになり、風俗ライターが「女性向けに"ちんこもみ募金"もすればいい、なんなら自分もちんこを提供する」などと全く需要のない提案を始めるわ、風俗ユーザを公言する男が「女性は性的に奔放であってはいけないという性規範のせいでちんこ好きが公言できない女性も多い」「レイプものAVが好きなフェミニスト女性も多い」と言い出すわでカオスだった。しかも、私は単に署名しただけなのに「(おっぱい募金に不当な言いがかりをつけたのだから)ステイトメントを発表しろ」などとクリスマスから正月にかけて粘着されたのであった。
それに加えて、次々と明るみに出る、左翼やリベラルとされる男性による性加害の事実にもだいぶ打ちのめされた。そして、自分でもよく思い返してみたら、デモの後の飲み会で「○○さんの奥さんは美人」みたいな話を男たちがわいわいと楽しそうにしていたことや「男ばかりのときは下衆トークしてる」と聞かされたことや、同じことを言っても一般女性の意見だと聞いてもらえず、男性(女性の場合は有名人やサークル内で有力なひとor有力な男性の関係者)の発言であれば内容が同じでも男性から賛同されてきたこと…ありすぎる。しかも、その男性たちは自分たちは自分たちが一般女性の発言にだけは耳を傾けていないということに無自覚なのだ。
左も右もミソジニストだらけの社会で
出来るだけ丁寧に話そうとしても、「男性は…」と言っただけで、「主語がデカい」とか「悪いのは痴漢であって男じゃない」とか言葉を遮られ、男性からの性加害について「自分に置きかえて考えて」と言えば、「それはホモフォビアだ」と非難される。「自分よりも圧倒的に力が強い相手から性的に加害される恐怖」を想像しろ、と言うのが、「ゲイは節操なく誰でも襲うものだ」に変換されるなら、それは受取る側のホモフォビアだと思うが、とにかく女の口を塞ぐための屁理屈を(というか、覚えたての単語を)繰り出してくるリベラル男は多い。しかし、実際には理解していないので矛盾したことを平気で言ったり、「自分はミソジニーを克服した」と思っちゃってたりする。そんな簡単に克服したと思える時点でなーんもわかってないよ。女性だって自分の中のミソジニーと向き合いながら生きるしかないのに。
女から言葉を奪い、発言機会を奪い、主導権を奪っておいて、その上で、「自分たち男性の気に入る範囲でなら女性差別に反対していいし、それなら応援するよ」みたいなメッセージをさも先進的であるかのような顔で掲げている男たちに腹を立てるなと言われてもなかなか難しい。
そんな男たちから「賛同」や「連帯」をしてもらわないといけないなんて、フェミニズムの後退もいいところだ。そんなものはこちらから願い下げである。
一方の「アンチフェミ」は、そもそも会話が噛みあわない。勝手に「暇な専業主婦」と決めつけてきたので「大黒柱ですが?」と言ったら、男を「養う」女がいては困るのか「妄想の夫の話をツイートしているニート」であると軌道修正した妄想を延々垂れ流し始めたり、徒労感しかない。「女のお気持ちのせいで低収入男性は結婚できないんだ!」と自分の性格とか社会性とかを省みずにぐちぐち言ってる公式マーク付きアカウントも1つじゃない。どれだけミソジニストの宝庫なんだよ!
フェミニズムは長期的には社会全体にプラスになる思想だと私は思う。しかし、短期的には男性にとっては好ましくない部分があって当然だ。男が不当に女性から奪っている権利を返せと言っているのだから。それを「フェミニズムはみんなのもの」と言って誤魔化して男性に賛同されても、本当に必要な社会改革には繋がらないのではないか。一見それらしい体裁を整えながらも、女性差別が温存されるだけにはならないか?「みんなのもの」でなくても、社会正義のために女性差別をなくそう!と思えない男の考える「みんなのもの」とは一体なんなのか?
そう考えると、男に理解してもらう労力よりも、まだ「私はフェミじゃないけど…」と言っている女性や「もうわきまえてらんねー」ってなってる女性に、「一緒に怒っていこうよ」と呼びかける方が建設的だ。批判や怒りは非建設的だと、我々は思い込まされてきただけなのだ。感情的だと言われることを恐れすぎてきたのだ。
でも、感情的でも論理的であることは可能だし、論理的に落ち着いて話せなくても、当事者の怒りを蔑ろにしていいことにはならない。うまく言葉にならない怒りや悔しさ、言葉にできないもどかしさ、その「もやもや」をなんとなくスルーして、見ないフリ気付かないフリをしてやり過ごして「賢く」立ち回ることよりも、「もやもや」を感じたら考えることを選びたい。感情的であることは悪いことじゃない。ひとりではうまく言葉にできなくても、きっと誰かも同じ想いを抱えているはず。
One more to count in, wake up the mountain!
さぁ、薪を持ち寄ってミサンドリーの炎を囲んで暖まろう。
今回のホルガ村カエル通信は以上です。
ミサンドリーを深める理由は毎日ごろごろ転がってくるものの、キッカケというのは多分それぞれに異なっているのではないかと思います。みなさんのミサンドリーがどこからきたのか(別にこのニュースレター読んでいるひと全員がミサンドリストかどうかはわからないですが)というのも教えてもらえると嬉しいです。#ホルガ村カエル通信
マシュマロに投げてくれてもいいですよ!
では、次回の配信でまたお会いしましょう🐸
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